靴選びの重要性

靴選び

靴は、治療の一環として非常に重要な要素です。特に足や下肢に不調を抱えている方にとって、適切な靴を選ぶことは治療効果を高めるために欠かせません。靴は体全体のバランスを保つ「土台」としての役割を果たしており、足に合わない靴を履くと、体の動きが不安定になり、治療の効果が十分に発揮されないことがあります。

靴はただのファッションアイテムではなく、健康を支える重要なアプローチであることを理解することが大切です。
手技療法、物理療法、運動療法といった一般的な治療法では改善が見られない方々に対して、靴選びは大変有効です。

正しい靴を履かないリスク

下肢バイオメカニクスの乱れ

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正しい靴でない場合、上行性運動連鎖のエラー※(正しくない動き)が起こり、これを原因に様々な疾患が生じてきます。
特に股関節以下の運動連鎖が乱れ易く、下半身の動きやバランスが崩れるため、股関節から膝、足首にかけての筋肉や関節が正しく働かなくなり、本来の動きができなくなります。これにより、日常生活やスポーツでケガや痛みが出やすく、下肢障害のリスクが急激に上昇します。

過回内外
上行性運動連鎖とは…
上行性運動連鎖は、足底で受け止めた床反力が、正しく分散・吸収されながら足首を介して上方に伝わる仕組みです。正しく伝わることにより、安定した体重移動や効率的な歩行、姿勢維持が可能になります。足から始まる上行性運動連鎖は、関節や筋肉が一連の協調運動として連動することで、効率的にエネルギーを使用し、無駄のない運動が行えます。

「上行性運動連鎖のエラー」は、足元から順につながる運動連鎖が崩れ、運動や姿勢に支障が出る状態を指します。
この流れが崩れると、立位や歩行などの安定性が失われ、運動パフォーマンスや、姿勢バランスにも悪影響を及ぼします。

エラーが起こる原因と影響

    原因
  • 靴の不適切な選択
  • 足部のアライメント異常(偏平足やハイアーチ、過回内・過回外など)
  • 関節の可動域制限
  • 筋力のアンバランスや筋疲労
    影響
  • 姿勢の歪みとバランス
  • 腰痛
  • 股関節の痛みや変形
  • 膝の痛み(膝蓋大腿関節症など)

このような症状が引き起こされることがあります

正しい靴のメリット

正しい靴を履くことは、足の健康だけでなく、全身の姿勢や体調にも良い影響を与える重要な要素です。

足の骨模型
体の安定性向上
足のアーチをサポートすることで、体重が均等に分散され、足裏に過度な負担がかかるのを防ぎます。このため、正しい姿勢を自然に維持しやすくなり、体全体のバランスも良くなります。
運動ランニング
疾患リスクの低減
適切なサポートがないと、膝や股関節に余計な負担がかかり、長期的には関節の痛みや変形の原因となることがあります。正しい靴を履くことで、足首から膝、股関節に至るまでの関節が安定し、怪我や変形のリスクが軽減されます。

靴サイズ測定

自分に合った靴を見つけるためには、正しいサイズを知ることが重要です。以下の計測数値をもとに靴のサイズを割り出します。
足長
1足長(そくちょう)
踵の先端から足趾の一番長い指の先端までを結んだ距離
足の長さを測定し、サイズが合っているか確認します。
足長
足囲
2足囲(そくい)
第1趾と第5趾の付け根の骨の張り出した部分の周径
足の周囲のサイズを測り、幅広い足にも合う靴を選ぶ手助けになります。
足囲
足幅
3足幅(そくふく)
第1趾と第5趾のそれぞれの付け根に接する垂線間の距離
足の幅を測定し、足の幅に適した靴を選ぶことで、足の負担が軽減されます。
足幅

靴の選び方

靴選びで外せない3つのポイント!!

ヒールカウンター
1カカトが硬い
カカト部分が硬いと、足の安定感が増しカカトが崩れにくくなります。
ヒールカウンター
つま先だけ曲がる
2つま先だけが曲がる
靴のつま先部分だけが曲がることで、足趾の動きをサポートし自然な歩行が可能になります。
つま先だけ曲がる
捩れにくい
3ねじれにくい
足全体がねじれにくい構造の靴を選ぶと、足のバランスが保たれやすくなります。
捩れにくい
シャンクの役割とは
※シャンクとは:靴底の踵部から土踏まずに入っている芯材
  • 土踏まず部分を補強し、足元を
    安定させる
  • シューズのねじれを防ぐ
  • 歩行時のバネの役割とMTP関節
    (足の拇趾第2関節)位置での返し
    の補助
平均サイズに当てはまらない方も多くいらっしゃいますが、特に男性は、あえて大きめのサイズを選ぶ傾向が見受けられます。 足、体の不調の原因につながりかねませんので、一度靴サイズを見直してみてください。

日本人の靴の平均サイズ
男性:25.0cm~26.0cm(E~EE)女性:23.0cm~24.0cm(D~E)キッズ•ジュニア:(E~EE)

靴の種類
ランニングシューズ ウォーキングシューズ スニーカー
『走る動作』に特化 『歩く動作』に特化 『おしゃれ』に特化
着地時の衝撃吸収力が高い 1時間以上歩いても疲労しにくい ウォーキングシューズのグレードダウン
推進力が高い 底材が幅広く、厚い作り 1時間以上歩くのは不向き
底材が幅広く、柔らかい シューズの強度が高いものが多い 底材が幅広く、厚い作り
推進力・安定性・衝撃吸収に優れている 推進力・安定性・衝撃吸収に優れている 推進力・安定性・衝撃吸収にやや優れている
(ウォーキングシューズにはやや劣る)
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正しい靴の履き方

正しい靴の履き方も重要です。足に合った靴を選んでも、正しく履いていなければ、その効果を十分に発揮できません。 正しい履き方を身につけ、相乗効果を目指しましょう。
01.靴を履く前の準備
靴紐を緩める
靴紐を緩めずに無理に履くと、靴の構造が歪み、足に余分な圧力がかかる可能性があります。
靴べらの使用

靴べらを使用すると、かかと部分の摩耗や型崩れを防ぐことができます。 特に、かかとの芯材がしっかりしている靴では、靴べらの使用でスムーズに足を入れることができ、靴の耐久性を保つことができます。

02.靴を履くときのポイント
かかとをしっかり合わせる
かかとがしっかりとフィットするように合わせます。かかとをトントンと軽く当て、位置を固定することで足全体のフィット感が向上します。
狭い空間を確認する

足先には適度な余裕が必要です。理想は、指先が靴先に軽く当たるか少し余裕がある状態です。狭すぎると、足の痛みや血行不良の原因となります。

03.靴紐の正しい結び方
適度な締め具合
靴紐はきつすぎず、緩すぎないように結びましょう。特に、甲の部分の靴紐の緩みを調整し、足が動かない程度にしっかり結ぶことが大切です。
フィット感を調整する

足首周りは少しきつめに結ぶことで、足の固定され安定しますが、長時間履く場合は血流の阻害感を感じない程度に調整しましょう。

04.靴を脱ぐときの注意点
靴紐を緩める
靴紐を緩めてから脱ぐことで靴を無理に脱ぐと、靴のかかと部分が傷みやすくなります。
靴べらを使う

脱ぐ際も靴べらを使うと、かかと部分の破損を防ぐことができ、靴を長持ちさせることにつながります。

靴とインソールとの組み合わせによる治療の相乗効果
〜手技・物理・運動療法に加えた新たなアプローチ〜

正しい靴とインソールを使うことで、以下のような相乗効果が得られ治療効果がさらに向上します。
  • 歩行時の
    バランス改善と衝撃吸収
    足元のサポートが強化されることで、下肢全体が安定し、関節や筋肉が正しい位置に保たれます。この安定性により、膝や股関節の負担が軽くなり、関節痛や腰痛の予防、改善に役立ちます。
  • 足の疲労軽減
    長時間の立ち仕事や歩行が多い職業では、足に疲労が分かりやすく、痛みや腫れの原因になります。 衝撃吸収素材を使用した靴とインソールで足の負担を考え、足裏の筋肉疲労が軽減されるため、疲労を軽減する効果があります。
  • アキレス腱やふくらはぎの
    負担軽減
    アキレス腱やふくらはぎの負担軽減
 特にハイアーチ(アーチが高い)や偏平足の方は、インソールを使用することで踵の位置が安定し、アキレス腱やふくらはぎの負担が軽減され、解消されやすくなります。

インソールは、足のアーチや姿勢をサポートするための中敷きで、足のバランスを整えたり、負担を軽減したりする効果があります。 インソールを活用することで、靴だけでは補いきれない部分をサポートし、症状の改善や予防に役立ちます。

↓インソールに関してはこちら↓
運動中の動的バランスを重視した設計で、足の自然な動きをサポートします。製品でも高いパフォーマンスを発揮し、アスリートや日常生活でのパフォーマンス向上を目指す方に最適です。
熱成形可能なEVA素材を使用し、足の形状に合わせたカスタマイズが可能です。足のアライメント改善や整形外科サポートに適しており、リハビリや足の問題解決を目指す方におすすめのインソールです。
靴やインソールを活用したアプローチは、手技療法や運動療法と併用することで、体全体のバランスを改善し、症状の根本改善を目指せます。従来の治療に加えて、足元から体を支えることで、より効果的な治療を提供いたします。
症例
主訴:外反母趾、タコ
元々、23.5cm(3E)のウォーキングシューズを履いていらっしゃいました。しかし、当院で足のサイズを測定し、ベストサイズは23.0cmの(2E)ということがわかりました。
元々の靴を履いて歩くと、『靴に足の指が当たって痛い』とお悩みがありましたが、新しい靴に変更したところ『痛みがなくなり歩きやすい』と実感していただきました。