日本人の3人に1人

慢性疲労症候群とは、体を動かせないほどの疲労が6ヵ月以上の長期にわたって続き、一晩寝ても疲れがとれず、日常生活に支障をきたすほどになる病気です。

仕事や育児など、疲労の原因がはっきりしている場合は「慢性疲労」であり、慢性疲労症候群には当てはまりません。
15年前に厚生省(現厚生労働省)が行った調査では、日本人の3人に1人が慢性疲労を訴えていると報告されています。IT化や自宅内勤務が進み、ストレスが増したと言われる現代では、さらに慢性疲労を訴える人の割合は高くなっていることが推測されます。

慢性疲労になると、作業量や活動量の低下という日常生活への影響ばかりでなく、思考力、注意力の低下から思わぬ事故を招く原因にもなります。さらにそのまま放置しておけば、症状悪化による慢性疲労症候群への移行やうつ病などの心の病気や生活習慣病など、さまざまな疾患を誘発することにつながります。

症状

  • 01.微熱・頭痛・喉の痛み  
  • 02.疲労感
  • 03.筋肉痛
  • 04.不眠と過眠
  • 05.気分障害

01. 微熱・頭痛・喉の痛み

代表的な症状として微熱があげられます。平熱より0.5~1.5℃程度高い熱が半年以上にわたって持続します。解熱鎮痛剤などを用いても熱があまり下がらないことも特徴といえます。 また、風邪をひいた時のような喉の痛みや頭痛が出ることもあります。

02. 疲労感

日常生活に支障をきたすほどの疲労感が引き起こされます。

03. 筋肉痛

全身または特定の部位に激しい運動をした後のような筋肉痛が現われ、動くことができないほどの痛みになることがあります。

04. 不眠と過眠

自律神経の異常により、寝つけない、眠りが浅い、早く目が覚めてしまうなどの「不眠」や、朝起きられない、日中に極度の眠気に襲われるといった「過眠」の症状、さらにはこれらが、一日のうち同時に現われることもあります。

05. 気分障害

うつ病様症状がでて、気分の落ち込みが続き、生活がままならなくなる場合があります。

うつ病 朝に重く、午後に軽減される傾向
慢性疲労症候群 午後の方が憂うつ感が強まる傾向
一般的には、うつ病の場合、症状は朝に重く、午後に軽減される傾向がありますが、慢性疲労症候群の場合、午後の方が憂うつ感が強まる傾向にあります。

また、注意力や集中力の低下などもみられます。物忘れがひどくなるなど、認知症のような症状がでる場合もあります。

原因

慢性疲労症候群は、原因が明らかになっていない病気です。しかし、様々な研究の結果、病気の起こる仕組みが少しずつ明らかになってきました。

身体は、神経系、ホルモン系、免疫系の3つがバランスを保って働いています。

ところが、ストレス※をきっかけにして、神経系の働きに異常が生じ、免疫の働きが低下すると、体内に潜伏していたウイルスが再活性化されます。そして、再活性化したウイルスを抑え込むために、体内では過剰に免疫物質が作られるようになります。

この過剰に作られた免疫物質が、脳の働きに影響を及ぼし、強い疲労感や様々な症状を起こすという説が現在有力とされています。
また、慢性疲労症候群の患者さんには、ある特定の遺伝子に関する異常が認められていることも報告されています。

ストレス学説

ストレスによる不調は様々ですが、体にストレスが加わると、そのストレス要因がどのようなものであっても、一定の反応経過を辿るとハンガリー系カナダ人生理学者ハンス・セリエは、ストレス学説の中で提唱しています。

警告反応期間抵抗期疲憊期
ショック相 反ショック相
筋弛緩
血圧・体温・血糖値→低下
副賢皮質→縮小
苦痛・不安・緊張→緩和
筋緊張
血圧・体温・血糖値→上昇
副賢皮質→肥大
胸腺リンパ節→萎縮
適応力獲得
ストレッサー弱まる・消失→回復可
血圧・体温・血糖値→低下
倦怠期の初期
ストレッサー長期化
→生体はさらに衰弱

ストレス=「外部刺激(ストレッサー)によって起こる歪みに対する非特異的反応」

※ストレッサー(ストレス要因)は、
・物理的ストレッサー(寒冷、騒音、放射線…)
・化学的ストレッサー(酵素、薬物、化学物質…)
・生物的ストレッサー(炎症、感染、カビ…)
・心理的ストレッサー(怒り、緊張、不安、喪失…) など多岐に渡ります。

ストレス学説は、ストレッサーに対して適応しようとする生化学的反応であるという適応症候群の理論にあります。
つまり、ストレスが加わることで、神経系、ホルモン系、免疫系の3つがバランス崩れ、脳の視床下部や副腎皮質などのホルモン分泌や自律神経系の神経伝達活動により、生体の状態を一定に維持しようとするホメオスタシスが働きます。
しかし、ストレスが過剰になると、ホメオスタシスが破綻し正しく生体を維持しきれなくなります。

一般的治療法

慢性疲労症候群の治療は、薬物療法を中心に行なわれています。

中でも、「捕中益気湯」などの漢方薬を用いて、身体の免疫力を高める治療や、活性酸素による細胞の障害を防ぐため、ビタミンC(抗酸化作用)を大量に服用する治療。その他、免疫系の回復を目指すため抗ウイルス薬や免疫調整剤が使われることもあります。

また、抗うつ剤、精神安定剤などが使われる場合もあります。

内科的な治療による効果がみられない場合には、ストレスへの対処法を患者と医者が話し合いながら見出していくための、カウンセリングによる治療も行なわれています。

メディカルジャパンでの介入例

慢性疲労、慢性疲労症候群からの回復には、闇雲な治療ではなく正しい評価、状態把握を行った上での適切な活動制限や日常生活アドバイス、栄養指導が不可欠です。
弊社では、高精度自律神経診機【TAS9 VIEW】を使用し、自律神経の状態や、末梢血管の血流状態を客観的に測定し、治療方針の決定に役立てております。

自律神経診断

末梢血流診断

症状回復には、脳の視床下部や副腎皮質などのホルモン分泌や自律神経系の神経伝達活動による正常なホメオスタシス活動が必須です。
そもそも、全ての生体の活動には血液が不可欠です。脳や副腎などの各器官への血流量を向上させるためには、その他へ分配される血流量を抑え、必要箇所への血流量を増加させる必要があります。上記を把握した上で、活動制限と日常生活のアドバイスを行い、免疫力向上や神経系への栄養補給を向上させる食事指導をお一人お一人に合わせて処方しております。

参考文献

すぐに役立つ暮らしの健康情報-こんにちわ、2009 年 12 月号、メディカル・ライフ教育 出版